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ディレクターバブリアン作 短編小説 「 バナナは僕のガードマン 」1

【終了番組】SCHOOL NINE MONDAY
ディレクターバブリアン作 短編小説 「   バナナは僕のガードマン  」1
バナナは僕のガードマン「ヒロシ~!待てよ~!」 ひたすら走る。追いつかれないように、必死に走る。 雨がもうすぐ降ってくれるはずだ。コンクリートの湿った匂いが漂っている。 もうすぐ雨が降るとわかるのは、僕の特技だった。 そしたらアイツもあきらめる。 「おーい!ヒロシ~!待てよ~!」 僕が後ろを振り向くと、アイツはまだ手にヤツを握りしめながら追いかけてくる。 背の高いタカヒロが更に高く掲げた手には何とも中途半端な茶色のカエルが、握られた手からはみ出ている。 止まるわけにはいかないんだ。 もし追いつかれたら、あの訳の変わらない色をしたカエルを顔にくっつけるつもりだ。 僕はカエルが大嫌いなんだ。 僕はクラスで1列に並ぶ時は「前へ習へ」で両手を腰に当てる役目。つまり一番前。 この5年生までずっと両手を腰。両腕をまっすぐ前にやってみたい。5年生なりの僕の小さな夢だ。 タカヒロは4年生になったら、ジャックと豆の木の木が伸びる様な速さでグングン世を伸ばし、とうとう一番後ろになってしまった。 そして、なぜか僕はいつもタカヒロにからかわれている。 ランドセルの中に知らない奴の上履きが入れられていたり、机の引き出しにクラスの半分のたて笛がぎっしり入っていたり、僕の給食のパンを取り上げたり。 タカヒロとは小1からずっと同じクラスだ。 2年生まではすごく仲良く遊んでた。身長も同じ位で、遠足での仲良く手を繋いでる写真もある。 3年生になり新学期を迎えた日、突然僕と遊んでくれなくなり、タカヒロときたら、度を超えた意地悪ばかりしてくるようになった。ある日の放課後、教室では緊張の3者面談。 僕のママは、僕的には普通のママ・・・だと思っている。 すぐに涙目になるので、担任の松本先生に「ヒロシくんは、とても優しい子ですね。」と言われただけなのに、慌ててハンカチをバッグから出していた。 僕の面談が終わって教室を出ると、入れ違いで入ってきたのはタカヒロだった。 やっぱり、すれ違う瞬間、僕に舌を出してきた。タカヒロは高そうなワンピースを着た上品なお母さんに「ちょっと、止めなさい!」っと、小さく怒られた。昇降口までママと歩いて、ハッと思い出した。 忘れものをした。体操着だ。今日持って帰らないと、来週月曜に汗臭い体操着を着ることになる。 そんなことになったら、タカヒロの絶好のからかいの餌食にもなってしまう。 「ごめん、忘れ物したから、先に帰ってて」 ママはちょっと残念そうに「あら、わかったわよ」と言って、昇降口から出て行った。 僕は5年生の教室が並ぶ3階まで、1段抜かしで階段を駆け上がった。 ランドセルに入っている筆箱と下敷きと教科書がぶつかり合って、ガタゴト音を鳴らした。 階段を上がり、2つ目の教室。それが僕らの5年2組だ。 廊下には、ソワソワを隠せないでいる次の面談の親子たちが教室の前ごとに並んでいた。 5年2組は、どうやらタカヒロの面談で終わりな様で、教室の前には誰もいなかった。 ドアをあけようと、手をかけたとき、中からタカヒロの怒鳴り声が聞こえてきた。 「だから・・・僕はバナナが大嫌いなんだよ!」 続いて松本先生のいつものおだやかな声が聞こえてきた。 松本先生は学年で一番人気の男の先生なんだ。 「タカヒロくん、でもね、バナナはたくさん栄養が入っているんだよ。給食の時は頑張って食べないと。男の子なんだしね。」 「だから!嫌いだって言ってんだろ!バナナなんで見たくもない!この世から消えちゃえばいいんだ!」 「タカヒロ、そんな言い方しないで。」 想像通りの上品なしゃべり方をしたお母さんがタカヒロを小さく叱る。 「そうか、タカヒロくんはそんなにバナナが嫌いなんだね。だったら、少しずつ練習して・・・」 「松本先生なんて、嫌いだ!」 ガタガタ、バタンとイスが倒れる音がして、タカヒロが教室から飛び出してきた。 僕は慌ててドアから手を離した。 一瞬タカヒロと目が合った。タカヒロは大粒の涙をポロポロこぼしながら、走り去った。・・・ふ~ん!なるほど! タカヒロはそんなにバナナが大嫌いなんだ! なるほどね! 僕は急に体が軽くなった気がして、2段抜かしで階段を駆け下り、家の近所にあるスーパーに走った。 続く→→

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