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「帆世雄一のいっちょ噛み太朗」#1 海藻クリスタル

THE G.O.A.T.
「帆世雄一のいっちょ噛み太朗」#1 海藻クリスタル

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 #1 海藻クリスタル

 皆さんは海藻クリスタルをご存知だろうか。

 ダイバーの間では密かに話題となっている絶景スポットで、暖流が流れ込む太平洋の特定の海域でのみ見られる透明度の高い海藻群は、海中に差し込む陽光を乱反射し、辺り一面を彩ってくれる。その相(すがた)はダイヤモンドやルビー、サファイヤ、クリスタルなど多様な鉱石のひしめく鉱床のようである、とは某有名旅行雑誌の評だ。

 ……というのは私の妄想であり、そんなスポットはこの世に存在しない。海藻クリスタルとは、日本業務食品株式会社さんの商品で居酒屋や小料理屋なんかで刺盛を注文するとマグロの下に敷かれている、ツマの代わりになったり海藻サラダに散りばめられたりする透明なキラキラした細かく刻んだ春雨のような姿のアレである。
 コリコリとした食感は妙な中毒性をもち、味も素っ気もないのに醤油をちょこんとつけると絶妙な塩梅になる。むしろ醤油の味を楽しむなら、これがベストなのではと思わせる一品だ。

 海藻クリスタルをはじめとしたツマと呼ばれるものを、私が如何に愛しているか公の場で話したことは、はてあっただろうか。
 まずは王道の大根のツマ、白髪大根。シャキシャキとした食感と清涼感がたまらないし、その様は雪解け間近の山中を流れる小川を思わせる、まさにツマの王。
 続いてきゅうりの千切り。食感では大根に軍配があがるものの、瓜科のさわやかな香りはどんな刺し身にもマッチするし、ごまをふりかけたり、わさびと合わせれば刺し身のポジションを脅かすレベルの美味しさになる。にんじんを細く切ったものをなにやらくるりと巻いたようなものは皆さんピンと来てくださるだろうか。茹でる前のマカロニのような、なんとも可愛らしくDNAを想起させる形状は、私の遺伝子のなかにツマを愛するなにか先祖代々続く想いのようなものを実感させてくれる。

 あとはあれだ。渋い紫色をした、立派なオフィスビルのロビーにドカンと置かれたお洒落なアクアリウムにでも繁茂していそうなもしゃもしゃとして、ピリッとした味わいのあの草。調べてみたら紅たでというらしい。独特の辛味はイカや白身魚と相性が良いように思う。
 ちょっと良いお店で出て来がちな穂紫蘇も忘れてはいけない。しごいて醤油に落としてから食べていたが、池波正太郎先生がそのままつまんで食べる方が香りが良いと書いているのを目にしてからは、したり顔で直にで口に含んでいる。
 他にも海藻の類や食用菊などなど、なんと広大なツマの世界であろうか。常にそこにいて寄り添ってくれる安心感と気分を変えてくれる清涼感。みなさんにもツマの素晴らしさが伝わったのではなかろうか。

 さて先日、法事の後のお斎(とき)で、妻と一緒に会席料理を頂く機会があった。ツマに全く興味のないうちの妻は、鯛やまぐろの刺し身に添えられたツマを、すっと私の皿に載せてくる。愛する妻のツマまで愛する、これこそ真の愛妻家ではないだろうかと1月31日、愛妻の日に想いを巡らすのであった。
 ツマらない話にお付き合いいただき、恐悦至極である。

文:帆世雄一

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