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#55『I got rhythm 音楽が生まれる時』 概要と選曲リスト

I Got Rhythm~音楽が生まれる時
#55『I got rhythm 音楽が生まれる時』 概要と選曲リスト
<番組のトーク・パート(概要)と選曲リスト>― 今月は、「初めてのボブ・ディラン」と題して、ノーベル文学賞詩人でもあるボブ・ディランを知るための特集をお送りします。今回は「ディラン、愛と放浪を歌う」と銘打って、心に刺さるようなディランの歌に聞き耳を立てていきます。ディランというと、当初は「風に吹かれて」や「時代や変わる」というような、60年代のいわゆるプロテスト・ソングが話題になりました。社会問題を扱ったトピカルな歌を歌う点も、たしかにディランの一面ではあります。でも今日は、彼のもっと、やわらかい、傷つきやすいところが見えてくる作品に接してみたいと思います。 というのもディランは愛の歌が多く、それも通り一遍の、愛の賛歌や失恋の涙の歌じゃなく、大人が聞いても人生をリアリティを感じさせるような歌をいっぱい作っています。あまりに個人的で入っていきにくい歌も多いんですが、今日は、誰の心にもジンと響くであろうという歌を集めてみました。 ディランの心の繊細さ、情の機微のようなものが伝わるよう、今回は訳詞を抜粋しながら、ディランらしい愛の世界を読み取ってみたいと思います。M1. 「Don’t Think Twice It’s All Right(くよくよするな)」 / Bob Dylan <Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。 「風に吹かれて」と一緒に1963年の『FREEWHEELIN' BOB DYLAN』というアルバムに収められている初期の歌です。「くよくよするな」という題で知られていますが、「思い迷うな、いいってことさ」という意味の題です。そこにすわって考えててもしょうがない、どのみち、もう、いいんだから どうして、なんて、考えるなよ、いまだにわかってないんじゃムリだ 夜明けの鶏が時を告げる、窓から見ると俺は消えてる 旅立つ理由はきみなんだから、思い迷うな、いいってことさ― 「本来さすらい者の俺が、女の子を愛した、でも当然のこととしてすれ違い、さすらう俺にもどって行く」という歌です。「放浪の人生を生きる者の、別れのリアリズム」といったらいいでしょうか。3番の歌詞はこんな感じです。おれの名前を呼んでもムダだぜ いまになって呼び止めたって おれの名前を呼んでもムダさ もはや声はとどかない 立ちさりながら思うこと おれはかつて女を愛した、女じゃなくて子供だったが ハートならあげられる、だがソウルをほしいといわれては いいんだ、ガール、思い迷うな― さて、この『FREEWHEELIN』というアルバムで、評価を固めた22歳のディランは、『時代は変わる』というアルバムで、プロテスト・フォークのプリンスの地位をかためます。そのあと翌年『Another Side of Bob Dylan』というアルバムを出すのですが、ここで、彼の詩作はもう一段、レベルアップを果たします。 それまでは、どこか過去のフォークソングの型を利用しているところがあったのが、本当に心の中をさらけ出すような歌が圧倒的になってきます。M2. 「It Ain’t Me, Babe(悲しきベイブ)」/ Bob Dylan <Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。 『Another Side of Bob Dylan』から、「悲しきベイブ」という邦題がついている、「違う、おれじゃない」という題の歌です。1番を訳してみましょう。おれの窓から去ってくれ ゆっくりでいい、離れてくれ きみが求める男は、ベイブ おれじゃないっていうことさ 強い男が好きだと言ったね 決して弱みを見せないで 正しかろうと間違ってようと きみを守って、防いでくれる すべてのドアを開けてくれる そういう男じゃないんだおれは ノー、ノー、ノー、違うぜ、ベイブ 求める男はおれじゃない。M3. 「Lay, Lady, Lay」 / Bob Dylan <Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。 1969年、アルバム『Nashville Skyline』に収められた歌で、全米トップ10入りしたヒットとなりました。その滑らかな歌い方といい、ディランにはいくつもの別の面があることを印象づけました。 『真夜中のカーボーイ』という、当時話題の映画の為に書かれ(結局使われませんでしたが)、ディランにしては珍しくエロスの香りのある歌です。レイ・レディ・レ・レイ、真鍮のベッドに横たわれ ステイ・レディ、ステイ、夜はいま始まったばかり 朝の光に貴女を照らし出してみたい 闇の中で貴女を強く求めたい ここにいて、レディ、夜はまだこれからだM4. 「Buckets of Rain(雨のバケツ)」/ Bob Dylan <Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。 最高傑作の評価が高い1975年のアルバム『血の轍』を締めくくるナンバーです。「バケツをひっくり返したような雨」とよくいいますが、この比喩は英語でも通用して、大雨のことをよく「Buckets of Rain」と形容します。バケツをひっくり返したような どしゃぶりの涙 おれの耳から吹き出しそうだ 手にはざんざん降りの月の光 君を溺れさせるほどの 愛がおれの中にある。― アメリカ庶民の民謡、あるいはその伝統をひくカントリー音楽、その底辺には、単純な言葉で綴られる深い悲しみが あるような気がしますが、それを取り出して、指摘に洗練させていくのが、ディランはとてもうまいと思います。その後もディランは、たくさんの恋愛と離別と喪失と苦悩の歌を生み出していますが、ここでは割愛させて頂きます。30年以上ジャンプして、2009年の Together Through Life というアルバムから1曲聴いてみましょう。M5. 「Life Is Hard」 / Bob Dylan <Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。 この曲は、ロバート・ハンターとのいう同世代のソングライターとの共作で、『My Own Love Song』という映画のスコアとしても使われています。このディランは、もうメローな歌詞やメロディを拒むことはありません。「おまえがいないんじゃ、生きていくのはつらい」と結ぶ『Life Is Hard』。70歳に近づこうという老人の、泣きのパフォーマンスです。~佐藤良明さんが対訳を手掛けた、ボブ・ディランの新訳詩集(全2冊)~ 『The Lyrics 1961-1973』『The Lyrics 1974-2012』(佐藤 良明 訳・岩波書店) 390曲に及ぶボブ・ディランの全自作詞を網羅した訳詩集。 佐藤良明さんの考察が加わった新訳で、英語の詩と対訳になっています。 ディランの歌詞の世界にどっぷりハマりたい方は是非、書店等でお手にとってご覧下さい。 書籍の詳細はこちら⇒(岩波書店HPへ)

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