Vol.168 丸亀市・本島 想いを受け継ぎ新たな挑戦!笠島地区の香川本鷹

建築を教える先生が、唐辛子を育てています。舞台は、瀬戸内海に浮かぶ本島・笠島地区。
塩飽水軍の本拠地として栄えた本島の北東部に位置する笠島地区は、天然の良港を持ち、三方を丘陵に囲まれた立地を生かし、中世において城が築かれた城下町的な要素を持つ集落。中でも塩飽大工の技が随所に見られる美しい街並みは国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。(昨年、選定40周年を迎えました。)
四国職業能力開発大学校 住居環境科 准教授の村井花子先生は、4年前から学生たちと建物の調査で笠島地区に通うなか様々な行事にも関わるように。
そこで出会ったのが、NPO本島町笠島まち並保存協力会会長の三宅邦夫さんです。
笠島地区の活性化に奔走する三宅さんが数ある活動のひとつとして続けていたのが、香川県の在来種で主に塩飽諸島で栽培されてきた唐辛子・香川本鷹でした。
三宅さんは熱い想いを持って栽培をされていましたが、担い手不足などに直面し、ある地域のシンポジウムで「もうこれ以上は無理!」と声を上げます。
それを聞いた村井先生のご友人が「じゃあ、私たちがその仕事を引き受けてやっていこう!」と言い出したことから、このプロジェクトがスタート!「花子と仲間たち」が誕生しました。

とんとん拍子に話は進み、昨年末には三宅さんから村井先生たちへ道具や技術を引き継ぐ「譲渡式(のようなもの)」が行われました。そこでは、譲渡した物リストだけでなく、「向こう3年は頑張って出荷してね」という約束が書かれた、三宅さんの本気度が詰まった契約書のようなものまで用意されていたそうです。
さらに、三宅さんの「指南書(本鷹日記)」には、牛糞を混ぜるタイミングや土の育て方が細かく記録されていました。今まで野菜は食べる専門で全く育てたことがなかった村井先生にとって、この指南書が大きな心の支えに。

引き継いだ三宅さん手作りの温室を使い、今年2月に自宅のカーポートで種まきをしました。
寒かったのでヒーターを入れて大事にしていたものの、2週間経ってもまったく芽が出ず。
「もう腐っとんちゃう?」
と言葉を浴びせかけた次の日から、「やばい!このままだと俺たち捨てられるのでは?!」と焦ったのか、ポコポコポコポコと芽が出始めたそう(笑)
村井先生は「声かけ」の大切さを実感したと言います。
香川本鷹栽培のお手伝いをされていた三宅さんの弟さんからも「1本1本に『お前大丈夫か』『水いるか』と愛を持って声をかけるんだ」と教わったそうで、毎日、声をかけながらスクスクと大切に育てています。
そして、村井先生にとって頼りになる存在がもうお一方。
同じ丸亀市・塩飽諸島の手島で香川本鷹を栽培している「手島香辛庵」の高橋周平さんです。(2023年9月24日放送)
実は、手島の高橋さんと三宅さんの本鷹づくりの師匠は同じ方、島で唯一の生産農家だった故・高田正明さんなのです。
高橋さんは、もともと美術大学を卒業されたアーティスト。
本鷹の育て方にも独特の視点があり、「目で見ること」や「形の美しさ」をとても大切にされていて「ちょっとでもバランスが悪い実や株があれば、そこには絶対に何か悪いことが起こっている」と仰っていたそう。
これを聞いた村井先生は、「私からは絶対に出ない言葉、最高にかっこいい!私にとってはもう師匠みたいなもの」と語るほど、大きな学びを与えてくれる存在になっています。
塩飽諸島の香川本鷹ネットワークの広がりに期待したいですね!

村井先生が本島・笠島地区に出入りするようになってから今年で4年目。
最初は、重要伝統的建造物群保存地区である笠島地区の建物調査や、学生たちの課外活動として島に関わり始めました。
「建物が残るだけではテーマパークのようになってしまう。やっぱりそこに住む人がいて、暮らしがあってこそ町並みが生きる」という思いから、学生たちと空き家活用やお正月のしめ飾りづくり、餅つきなどのイベントを企画してきました。
連れてこられた学生たちは最初、「コンビニがない!」「自販機がない!」と文句ばかり言っていたそうが、島の人々と触れ合ううちにすっかり本島のことが大好きになり、卒業する頃には「今度、自分たちで笠島地区に泊まりに行こう」と計画を立てるほどになるそう。

ゴールデンウィークに移植され約一ヶ月。
台風6号が接近する中、香川本鷹の様子を見に畑へ向かった村井先生と主要メンバーの大林志のぶさんに同行させていただきました。大林さんはお母様が本島のご出身で子供の頃はよく本島に遊びに来ていたそう。村井先生が本島に関わるようになってからは、笠島地区でイベントがあると聞くと万難を排してでもやってくるほど島への熱い想いを持っています。
当初、三宅さんからは畑に植えるのは「30本」と聞いていたのですが、苗が順調に育ち、畑の耕す面積を増やすことができたことから、倍の「60本(これまで同様の育て方)」+「12本(実験的な育て方)」の合計72本が植えられています。

本鷹が風で倒れて折れてしまわないよう、株を真ん中の支柱にしっかり紐で結びつけ、周囲の杭を繋いで頑丈な防風対策を施しました。現在の本鷹は、移植時から背丈が2〜3倍ほどに成長し、茎も太くなり、愛らしい白い花を咲かせるものも。

この畑には、近くにある古い井戸水が引かれており、太陽光パネルの電力を利用して、タイマーによる自動水やりシステムを動かしています(これもめちゃくちゃ大変だったそう)。今後は、通常の電気を畑に直接引き込み、天候や太陽光の状況に左右されない、より安定した給水環境にアップデートさせる予定です。
そして、四国職業能力開発大学校の学生たちと一緒に、本格的な「スマート農業」の実証実験の場へと進化させます。
電子情報技術科と電気エネルギー制御科の学生たちの開発課題として、畑に監視カメラを設置して遠隔からスマホでいつでも様子を見られるようにしたり、温度や湿度、土壌の水分量を自動で計測・遠隔操作できるようにしていきたいとのこと。
村井先生は「高齢の島の人でも無理なく続けられ、経験がない移住者でも唐辛子栽培に乗り出せるような指針(マニュアル)を作っていければというのもありますが、今、私自身が非常に楽しいです(笑)」と、笑顔で畑のビジョンを語ってくださいました。

香川本鷹は7月末から8月初めにかけて収穫が始まり、11月や12月の霜が降りる頃まで長い期間、実をつけます。
畑は、本島の港から笠島の町並みに向かう途中にあり、島の路線バスがすぐ真横を通る場所にあリマス。
背丈が1.5メートルほどになり、真っ赤な実がなった時には、バスの車窓からの景色を一変させるほどの「ルビー色の畑」になるはず。
大林さんは、「三宅さんがこれまで出荷・販売されていたお客様にお届けすることに加え、地元のオリーブオイルやニンニクを合わせたペペロンチーノ用のオイルや青い時期のフレッシュな本鷹を使ったピクルスなど。地元の飲食店と連携して新しい特産品も作ってみたいです。」と、魅力的な商品開発のアイデアも広がっています。


「花子と仲間たち」には、大林さんともうお一方(ご両親が学校の先生で昔、本島の分校で勤務されていたため住んでいたことがある)の主要メンバーのほか、建築関係のお知り合いや四国職業能力大学校の卒業生など心強い仲間が増えてきていますが、まだまだ仲間を募集中!
自転車の後ろに「仲間募集中」のチラシを貼って、本気で一緒に活動してくれるメンバーを探しています。
島が好きな方、香川本鷹が好きな方、ちょっとやってみたいという方も大歓迎!
夏〜秋の収穫期には、真っ赤に染まった本鷹をみんなで収穫する予定ですので、少しでも「おもしろそう!」と感じた方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
☆本島へのアクセス情報☆
丸亀港から本島汽船のフェリーもしくは旅客船にて、約20分から35分。
時刻表など詳しくは 本島汽船のホームページ をご覧ください。
丸亀市では毎月20日を「航路運賃無料デー」とし、旅客運賃が無料となっています。
本島・広島の各港には、地元に縁のあるお土産が販売されています。
この番組は一週間の間、 radiko でもお聞きいただけます。
また、AuDee では、過去の放送をアーカイブしています。
あなたの島旅のお供に。。。